青い鳥のエピソード。
生まれる前の国で、「恋人同士」と呼ばれ仲睦まじく暮らしていた少年と少女。
あるとき、2人は離れ離れになって地上に生まれることになってしまった。
地上でお互いを見つけられるように何か目印を持って行こうとする。だけど、時間がなくて2人は何も生まれる前の国から持ち出すことができないまま、生まれる子供たちを運ぶ船に乗る順番を迎えてしまう。
そのとき、少女は少年に告げる。
「私は地上で一番不幸になっている。それを目印に私を見つけて」
どうして、彼女は目印に不幸なんて選んだのだろう?もっといい、明るく楽しい目印を選ぶこともできるのに、なぜ自ら望んで不幸になろうとするのだろう?
そんな疑問を小さい頃には抱き、まったく理解できなかった。
でも、大人になってから、いくつかのままならない恋愛を経験してから、青い鳥の少女がなぜ、「この世で一番不幸」なんて目印を選んだのか、感覚的に分かる。
それどころか、彼女は私なんじゃないかと思う。
最も愛する者と引き離された悲しみに自らを望んで縛り付け、幸せになることを拒みながら、最も愛する者の手でしか救われようとしない。最も愛する者を「貴方がいなければ私は不幸だ」と束縛しようとする。
自ら世界で一番不幸になるという不可解な選択は、彼女のエゴの声だったのではないだろうか。