【小話】鬼を驚かした不動明王の真言・般若心経
■不動明王の御真言の話
真言宗の僧侶が夜道を歩いていた。僧侶は毎日同じ時間に同じ道を通る。
それを知った鬼が、その晩は待ち伏せをしていた。
さて、僧侶の姿が見えてきた。鬼は僧侶の行く手を阻もうと僧侶の前に進み出た。
しかし、僧侶は何やらブツブツと唱えている。見ると、僧侶の後ろに不動明王がついている。鬼は怖くなって逃げ出した。
■般若心経の話
別の日、鬼は今度は別の僧侶に目をつけた。そして、その僧侶が毎晩通る道で待ち伏せをした。
さて、僧侶の姿が見えてきた。鬼はまた、僧侶の前に進み出た。しかし、僧侶の姿が消えてしまった。
なんと、あれは僧侶と見えて魔物かはたまた幻であったか。それとも、何かそれよりも悪しきものか。
鬼は怖くなって逃げ出した。
その僧侶は実は、ずっと鬼の前にいた。しかし、僧侶は般若心経を唱えていた。般若心経を唱えることで「空(くう)」となり、鬼にその姿が見えなくなったのであった。